CHARACTER

2024.08.26

赤の国|一番合戦初命

当代最強を目指す女子高生格闘家「一番合戦初命」当代最強を目指す女子高生格闘家「一番合戦初命」

一番合戦初命

プロフィール

むむッ、これは……強者の気配! 手合わせ願いますッ!

 かつて【最凶生物】と謳われ、伝説を残して表舞台を去った格闘家「ザ・ワン」に憧れ、17歳にしてあらゆる格闘技を極めた女子高生格闘家。

 〝ザ・ワンを継ぐもの〟を自称しており、当代最強の格闘家になって、いつか再び彼を表舞台に引きずり出すことを人生の目標としている。

 起きている時間のすべてを最強になるために費やしているので、学生ながら勉強は苦手気味。

 いわば脳筋ではあるものの、両親から格闘家たるもの礼節を重んじるよう厳しく育てられたため、誰に対しても礼儀正しい。

 憧れを追い求めるうちに、やがて自分以外の「強者」がいかなるものか知りたくなり、長期休みの度に他国に訪れては、現地で見出した強者に戦いを挑む武者修行の旅をするようになった。

 他国の代表者たちのように、他者と協力して戦うことはない。

 「最強」とは、孤高だからである。

一番合戦初命

Name Hajime Ichibakase
Temper 直情的 礼儀正しい
Memo 身体能力も高いが、何よりも目がいい。
根拠はないが常に自信満々。
声がすさまじく大きい。
実は料理上手。
Favorite 肉まん 羊羹
Birth 17歳 ♀
Size 166cm
Job 女子高生 格闘家
Family 父 母

ザ・ワン

Name The ONE
Temper 一騎当千 泰然自若
Memo ザ・ワンはリングネーム。
【最凶生物】は二つ名。
本名を含むプライベートは非公開。
現在は表舞台を去り、消息不明。
Favorite 生卵
Tribe 人間 ♂

赤の国 : 緋命帝国(あけみこと―)

 ――この国では、武力こそ正義である。

 遠い昔の天災をきっかけに、貪欲に他国の文明を採り入れて発展した。

 隣国の優れた技術を融合させ、遺伝子・生体分野の研究に応用。好戦的で自己研鑽を好む国民性も相まって、いまや異種格闘技が国技となっている。戦争ゲームの開始に伴い、軍需産業にも注力し始めた。

 天災の発生頻度がずば抜けて高い一方、対策も随一。近代的な木造建築が広く普及した。偶然にも〝現代日本〟に近しい発展を遂げようとしている。

 国のトップは圧倒的な武力で乱世を統一した初代皇帝の末裔。君臨は47代にも及ぶ。

皇紅冥

Illust. 桜ちょみ/工画堂スタジオ

 現・皇帝、皇紅冥(すめらぎこうめい) は戦争ゲームに様子見の姿勢。緋命帝国では珍しい頭脳派であり、突然おかしなことを言い出したティアリの真意を探っている。

 現役女子高生としての側面も持ち、友人の一番合戦初命に代表選手として参加するよう依頼した。

 戦争ゲームランキング「3位」(2024.夏時点)

初命 : はじまりの物語

『次の挑戦者は誰だ? ……おらんか。そうか。各国の強者を選りすぐったと言っても、こんなものか……』

 残念そうに呟く男の周囲には、気絶した「挑戦者たち」が転がっている。

 老若男女どころか、人間も獣人も魔獣も機械も―― 分け隔てなくすべてをノックアウトしたその姿は、まさしく【最凶生物】と呼ばれるに値するものだった。

「はわぁぁ……! ザ・ワン、ちょーかっこいい~! ぜんぶやっつけたぁ!」

 ブラウン管に映るその姿に幼い歓声をあげたのは、まだわずか4歳の女児、一番合戦初命である。

「おかーさん、もういっかい! ね!」

 大きな目を輝かせ、同じ映像をもう一度再生するよう頼み込む初命。

 今日だけで4回目のこのやり取りに、隣で見ていた初命の母親は苦笑しながらリモコンを操作する。

「初命はほんとにザ・ワンが大好きねえ。やっぱりお父さんの血かな。……じゃあ、もう一回見たら、ちゃんとお風呂に入るって約束できる?」

「ん! ゆびきり!」

 母親と指切りをした初命は、ふたたびブラウン管にかじりつく。

 初命が夢中になっているのは、とある大会のアーカイブ映像だ。

 あらゆる意味での肉体改造が盛んであり、格闘技全般が国技として広く親しまれる緋命帝国の中でも、彼は飛び抜けて強かった。

 長い歴史の中でもザ・ワンに勝る者はおらず、今後も現れないだろうと囁かれているほどだ。

 その圧倒的強さから【最凶生物】という異名を持つ彼は、いついかなる時でも惜しみなく拳を振るい、強さとは何たるかを全世界に見せつけたのである。

 つい一週間前、父が見ていたこのアーカイブをたまたま目にした初命は、ザ・ワンの姿に一瞬で魅了された。

 ザ・ワンは強い。強いことは、格好いい。……自分も大きくなったらこうなりたい。

 格闘家である父の背中を見て育ち、幼いながらも一般的な帝国民として強さを美徳と認識する初命にとって、ザ・ワンの規格外の強さは憧れだった。

「はじめねえ、ザ・ワンになりたいなぁ~……」

 映像を見ながら呟く初命の頭を、母親が優しく撫でる。

「初命がいい子にして、いっぱい鍛錬すればきっとなれるわ」

「たんれん……。やる!」

「よしよし、そしたら初命はザ・ワンくらい強くなるわよ~。お父さんとお母さんの娘だもん!」

「ほんと!? ゆびきりする?」

「しよっか!」

 先ほどに続いて二度目の指切りを交わし、初命はまたザ・ワンの雄姿を食い入るように見つめる。

 いまはただの親バカに過ぎない「約束」だったが、そう言えるだけの根拠はあった。

 一番合戦家は特に優れた身体能力を持つ血筋で、加えて父は有名な格闘家、母は管理栄養士と十分なサポートを受けられる家庭だからだ。

 そして時は流れ――

◆ ◆ ◆ ◆

 ――女子高生格闘家、一番合戦初命の朝は早い。

「……集中ッ!」

 自宅に隣接する道場の庭。いくつも立ち並んだ的を前に、初命は目を閉じて集中した。

 深く息を吸い込んだのち、目にもとまらぬ速度で鋭い蹴りが繰り出される。すさまじい衝撃音とともに、的の群れが吹き飛んだ。

 いまの蹴り一撃で、庭にあったすべての的を薙ぎ倒したのである。

「よし、今日もいい感じッ! 我が蹴りに曇りなーし!」

 すさまじい足技を見せたとは思えぬ軽い口調で言うと、ぐっと伸びをする。

 それから、道場の入り口に置かれた時計を見た。登校時間まであと一時間ほどだ。

「おっとっと。ギリギリになっちゃった。早く行かなきゃ!」

 初命の通う学校は家から近いし、もう朝食も着替えも済ませているので、まだ時間に余裕は持てている。

 しかし、初命には早めに家を出なければならない理由があった。

「朝練終了っと。今日もありがとう! あとでまたよろしくねッ!」

 吹き飛ばした的に頭を下げ、元の場所に立て直してから、自宅へと戻った。

「おかえり初命。ちゃんと的は戻した?」

「戻した! 学校行ってくるね!」

「はいはい。気を付けて行ってらっしゃい」

「気を付けることもないだろう、初命は」

「ううん、遅刻しないように気を付けるッ! 行ってきまーす!」

 先ほどひとりで朝食をとった茶の間には、朝食中の両親がいる。

 軽く会話を交わし、置きっぱなしにしていた鞄を掴むと家を飛び出した。

「……偉いなあ、あの子は。きちんと武道と学業を両立して」

「〝最強になりたければ勉学も怠るな〟――ちゃんと素直に聞いてくれたおかげね。……まあ、格闘技に関係ない勉強はやっぱり苦手みたいだけど」

「いずれ身につくだろ。初命は真面目だし」

「……あなたって親馬鹿よね」

 初命の背中を見送った両親は、のんびりと食べる手を再開した。

◆ ◆ ◆ ◆

 家を出た初命は、いつも通り通学路を歩いていた。

 友達は多いものの、登下校はいつもひとりだ。というのも――

「一番合戦初命! 俺と勝負だ!」

 突然目の前に飛び出た筋骨隆々の男が、初命に人差し指を突き付けて宣戦布告する。

「もちろんッ! ぜひ手合わせ願いますッ!」

 一方の初命は驚くこともなく、むしろ前のめりに食いついた。

 まだ学生ながら、一部ではザ・ワンの再来として名を馳せる初命。好戦的な国民が多く、異種格闘技が国技として親しまれるこの国では、こうして野良試合を挑まれることも珍しくない。

 そして初命が勝負の申し込みを断ることもない。戦えば戦うだけ、戦争ゲームの代表に選抜される可能性が上がることを理解しているからだ。代表に選抜されるのは、初命の人生の目標たる〝最強の格闘家になってザ・ワンと表舞台で相まみえる〟という夢を叶えるための大切な第一歩であり、当面の大目標でもあった。

 なので何年もそうしているうちに、いつしか友人たちの間で〝初命ちゃんの朝と帰りは自由にさせておこう〟という共通認識が広まっていった。

 ゆえに、登下校はひとりなのである。初命自身もその方が気楽なので、特に気にすることはない。

「ザ・ワンの再来と持て囃されているからって俺を舐めるなよ! 何を隠そう俺は――」

「言葉にするのは野暮ってものです! 見せてくださいね、実戦でッ!」

 長話になりそうな男の話をばっさりと切り捨て、拳を構える。

 初命はあらゆる格闘技を会得しており、その中でも特に蹴撃技を得意としている。それでも試合う前に拳を構えるのは、憧れのザ・ワンの真似をしているからだ。

「――では。いざ尋常に……。勝負ッ!」

 初命の合図と共に、男がその巨体からは考えられぬ速度で詰め寄る。

 しかし―― 反射的に繰り出された蹴りの一撃で、至極あっさりと吹き飛んだ。

「ぐふぅっ!?」

「……ありゃ? 大丈夫ですかッ!?」

 慌てて駆け寄るも、倒れ込む男は白目を剥いている。

 脈はあり、外傷も見当たらないが意識はない。どうやら脳震盪を起こしたらしい。

「おーいッ! ……名前聞き損ねちゃった。お兄さーん!」

 頭を揺らさないよう気を付けながら何度か呼びかけるうちに、男は意識を取り戻した。

 一発で倒れたのは恥と言わんばかりに頭を抱え、〝もう来ないからな!〟と半泣きになりながら俊足で立ち去っていく。

「あ、行っちゃった……。ありがとうございましたッ! 糧になりましたッ!」

 その後ろ姿に、初命は敬意を持って一礼した。

「……うーん。ちょっといい当たりすぎたのかな? あの人すごく速かったから、その分威力も乗っただろうし」

 腕を組み、先ほどの一戦にも満たない一瞬を振り返る。どんな戦いでも必ず糧にするのが初命の信条だった。

 しかし―― すぐにため息が零れる。やはり刹那の決着すぎて物足りなかったのだ。

「はぁ。……早く修行に行きたいなあ。まだ見ぬ強者が待ってるのに、夏休みまであと一週間なんて……。待ちきれないよ~!」

 初命の声量に驚いた鳥の群れが、ばさばさと飛び立つ。

 叫んだとて時間は過ぎるわけでもない。初命はとぼとぼと学校へ向かった。

◆ ◆ ◆ ◆

「……お、終わったあ~……」

 チャイムの音と共に突っ伏す。外はまだ明るいが、日が傾きつつあった。

 明日から期末試験を控え、授業は今学期のまとめや自習が主となっている。

 なんとか良い点数を取るため、必死に授業の内容を詰め込み直し続けた初命の頭は、もはやパンク寸前だった。

 その頭上から〝初命、もう限界じゃん〟とクラスメイトの笑う声が降ってくる。

「だって、お父さんの座学より難しいんだよ!? 無駄な勉強なんてないって言われても、国の歴史まで覚えてらんないってッ!」

「気持ちはわからなくもないけどさ」

「絶対座学の方が難しいでしょ。知らんけど」

「座学は難しいけど、実戦交えたら身につくから! でも歴史とかは……そういうのじゃないじゃん!」

「はいはい、そうね」

 がばっと身体を起こし、大げさな身振り手振りを交えながら、自分の席を囲む友人たちに力説する。

 とは言うものの、それで勉強から逃げてはならないことも理解していた。再び机に伏せ、ぎゅっと瞼を閉じる。

「うう~。頑張るしかない……。赤点あったら行かせてもらえないんだもん。武者修行」

 しょぼくれつつも呟いた通り、初命がパンクしながらも必死になる理由はただひとつ。

 格闘技一辺倒にならないよう育て上げた両親による、〝試験で赤点を取った場合、長期休暇は勉強期間とする〟という誓約を回避するためだ。

 武者修行と称した長期休暇中の諸外国周遊は、初命にとって大きな楽しみであり、当代最強を目指すための大切な時間でもある。だからこそ、学業に取り組ませたい母親にしっかりと掌握されていた。

「それがモチベになってるのもすごいよ」

「旅行は楽しそうだけどね~」

 口々に言いながら、帰る支度を整える友人たち。

 初命も机にしまっていた教科書やノート、そしてハンドグリップやダンベルその他諸々トレーニンググッズを鞄に詰め直し、立ち上がった。

「初命は今日も寄り道しないでしょ?」

「うん、テスト勉強もしなきゃだし。いつも誘ってくれてるのにごめんね! ……じゃあまた明日ッ!」

 手を振ると、初命は風のように教室を飛び出す。何の変哲もない、いつもの光景だ。

 クラスメイトたちは〝また明日〟と口々に挨拶しながら、その背中に手を振り返して見送った。

「……初命」

 ショートカットのため廊下の窓から校舎裏へ飛び降りる。破天荒な行動を予測していたかのように、着地地点で彼女を待っている者がいた。勝手知ったる仲であるため、笑顔で語り掛ける。

「どしたの、コーメー?」

「……えっと。巻き込んで、ごめんなさい。でも、あなたを信頼しているからこそよ。……ううん。言葉がまとまらない。家に帰れば分かるから。それじゃ」

 極めて高貴な身分を隠して学園生活を送る友人は、初命に一礼すると優雅に歩み去った。

 いつもは自信に満ち溢れている友人の歯切れの悪さに、初命は首を傾げた。

◆ ◆ ◆ ◆

「ただいまッ! ……あれ? お父さん、道場は?」

 元気よく玄関の戸を開けると、珍しく両親が立っていた。母はともかく、父はこの時間ならば道場にいるはず。ゆえにイレギュラーな光景だ。

 ふたりともどことなく動揺している様子から、これがただの出迎えでないことは分かる。初命は無意識に姿勢を正した。

「初命! おかえり。……あのね、落ち着いて聞いてね? とにかく、まずは深呼吸して」

「へ? うん。……あの、どうしたの……?」

 まさか親族に不幸でもあったのだろうか。不安な気持ちになりながら、言われた通りに深呼吸をする。

 そのまま次の言葉を待つ初命に、父から紅い封筒が差し出された。

「初命が開けなさい」

「う、うん。わかった……?」

 封筒を受け取った初命は、その装飾を見てぱっと目を見開く。

 金で箔押しされているのは、皇(すめらぎ)家―― この国を代々治める、皇帝一族の家紋だ。つまりこれは皇室から送られたものに他ならない。

 普通に生きていれば、そんなものを受け取る機会はない。初命は頭角を現しつつあるとは言え、まだ学生に過ぎないのだから尚更だ。

 しかし、ただひとつ。皇帝直々に、国民へ書簡を送る機会が存在する。

「こ、これって」

 緊張で、一気に口の中がからからに乾いた。両親に視線を向けると頷かれる。

「本当はいま渡したくなかったけれど、勅命だからね」

 母のその言葉で、中身はもうほぼ確定したようなものだった。

 震える手で丁寧に封筒を開き、中の手紙に目を通す。

 現皇帝・皇紅冥の署名があるそれは、まぎれもなく初命が目標のひとつとしていたもの。戦争ゲームの代表に、一番合戦初命が選出されたという報せだった。

「わっ、えっ、……うわーッ!? わたしッ!? 代表ッ!? 本当にッ!?」

 リミットを超えた初命の声量に、家中がびりびりと震える。

 叫びを見越して耳を塞いでいた両親ですらガードし切れず、苦悶の表情を浮かべた。

「ご、ごめんお父さんお母さん!」

 慌てて謝罪するが、興奮は未だ冷めやらない。

 何度も手紙を見ながら〝……ほ、ほんと!? 夢じゃないよねッ!?〟と頬をつねっていると、ようやく気を取り直した父が構えた。

「夢かどうか、父さんと手合わせするか?」

「したい! ……あっ、でも出発の準備しなきゃ!」

「準備? いくらなんでも早いんじゃないか。まだ一ヶ月あるだろう?」

 代表選出の報せは、ゲームの開始から一ヶ月前に届くようになっていた。いくらなんでも、まだ出発準備をするには早すぎる。

 首を傾げた父を横目に、初命は〝だってこうしちゃいられないよッ!〟と拳を握った。

「すぐに鍛錬しないと! だから、いますぐ武者修行の旅に――」

 話しながら自室に向かおうとする初命の行く手を阻んだのは、微笑みを浮かべた母だ。

「……初命? あなた明日から試験でしょ。約束、忘れちゃった?」

「で、でも!」

「でもじゃない。文武両道じゃなければ真の〝最強〟にはなれないって、お母さん何度も言ったよね?」

 笑顔のまま強い圧をかける母親から視線を逸らし、救いを求めるように父親を見る。

 しかし父は、なにも言わず首を横に振った。

「そんなぁ~……。手に付くわけないよ!」

 うなだれる初命の頭を、苦笑した父がぽんと叩く。

「まあ、どんな状況でも平常心を保つのは肝要だ。これも修行と思いなさい」

「……そっか。そうだよね……。勉強、頑張ります……」

 明らかにしおれた様子の愛娘に、両親は代わる代わる〝今日は初命の好きなだけ、好きなものを食べなさい。お母さんなんでも作ったげるから〟〝あとで父さんと本気の手合わせをしような〟とフォローを入れる。

 それでようやく、初命は元気を取り戻した。

「精一杯努めます。……お国のためにッ!」

◆ ◆ ◆ ◆

 ――その後。

 無事すべてのテストを平均点より少し下で乗り越えた初命は、〝黒の国〟ことマギアテ連邦に訪れていた。

 もちろん、武者修行の旅である。敢えて、特に治安の悪い州を選択した。

「マギアテか……。何年振りだったっけ? 楽しみ!」

 ふと獣のような鳴き声と金属音が耳に飛び込む。

 近くで〝なにか〟が戦っているようだ。

「むむッ! この音、間違いなく強者の気配……!」

 恐怖は一切ない。なぜなら、一番合戦初命は「最強」になる者だからだ。この程度じゃ恐れない。

 まだ見ぬ「強者」の気配に胸を躍らせながら、初命は駆け出した。